日本人の情けなさ、特に政治家やエリートの情けなさばかりが目につく今日この頃、ここらで気分転換に日本人のすごさについて語ってみました。日本人のすごさとは何かと言えば、その一つはなんと言っても物作りの面でしょう。日清、日露戦争の時には、日本軍は、イギリス製の軍艦に乗って戦いました。それが大東亜戦争では、戦艦「大和」という巨艦を作り上げ、戦後は造船王国になりました。カメラと言えば昔はドイツ製が有名だったが日本はもうとっくにドイツを抜いてしまいました。45年ぐらい前私は一時工作機械の輸出をしていましたが、その時アメリカやドイツ製の工作機械が群を抜いていました。それがいつのまにか日本製工作機械が圧倒的シェアを占めるようになりました。家電も世界一になったし、自動車も質、量ともに現在世界一になっています。こういう例はいくらでもあります。最も状勢の変化で世界一の座を失った製品もありますけど、しかし日本がある製品を作り出すとたちまちその製品の世界一のメーカーなってしまうことも事実です。
こういう点があるからこそ、アメリカ政府は、日本が航空機産業に手を出さないように日本政府に圧力をかけてきたのです。アメリカは日本が航空機産業で世界一になってしまうことを恐れていたからです。日本人の物づくりのすごさはどこから来ているのでしょうか。それは日本人職人のすごさです。日本人職人のすごさとはなにかと言えば、物づくりに精根傾けてつくることが、直接金儲けにつながることでなくても平然として作り続けることができる一面があるからです。なぜ作り続けることができるのか、それは良い製品を作り上げることに自分の人生の意義をみつけるからです。金儲けは二の次になってしまうのです。
一つその好例を紹介しましょう。日本刀の製作です。鎖国が解禁になった頃から日本刀と浮世絵が欧米諸国に持ち運ばれました。浮世絵の技法はまねされたが、日本刀はまねることができなかった。欧米人は日本刀を作れなかったのです。だから日本刀は、現在の製鉄法でできた鉄では作りだせません。日本刀の材料になる鉄は、現在ではどのような方法で作られているのか。平成9年に公開されたアニメ映画、「もののけ姫」は、当時20世紀の日本映画誌上、歴代興行収入第一位になって有名にもなりましたが、その「もののけ姫」で紹介された「たたら製鉄法」です。「たたら製鉄法」は、およそ1,500年の歴史を持つといわれ、その間改良に、改良を重ねて江戸中期に完成されたと言われる製鉄法です。その江戸中期に完成したといわれる「たたら製鉄法」で現在でも日本刀用の原材料を生産しているのです。どこか? 島根県奥出雲町です。毎年一月から二月の間に年三回から四回の操業が行われています。一回の操業では三昼夜不眠不休です。砂鉄10トンと木炭12トンが投入され四日目の早朝約2.5トンの鋼(はがね)が作り出されます。この2.5トンの中から約900キロの玉鋼(たまはがね)が取り出されます。この玉鋼(たまはがね)が日本刀の材料として使用されるのです。この900キロの玉鋼は、刀匠名人から刀匠修業中の人たち約300人のもとえ送られてゆきます。
玉鋼の最終使用者わずか300人ばかりのためにわざわざ過疎地の山奥で江戸時代から続く「たたら製鉄法」で、一端操業に入ると三昼夜不眠不休で、玉鋼(たまはがね)を作っているのです。どうみても金銭的に割が合いません。
日本刀作りに関わる人たち、ほとんど全員が経済的にはあまりめぐまれていないとも言われています。そういえば日本刀作りで大金持ちになった話など聞いたことがありません。この刀匠たちの姿は、金儲け万能主義の現在では神様のようにすら見えます。サラリーマンも30代に入れば一人前に扱われるが同じ30代の刀匠たちは、まだまだ修業時代です。将来金銭的な見返りを期待できない仕事でしかも青春をほとんど犠牲にして打ち込む姿勢、この資本主義時代全盛期にあえてさからうような生き方を平然と続けるこの姿勢。まさに私のような人間には神さまのようにすら感じてしまいます。このように金銭的に見返りの期待できない伝統的な仕事をひきついでいる人たちは、刀匠たち以外にもまだまだ沢山います。例えば、京都のひな祭り人形制作者です。私は一人の職人がひな祭り人形を作りあげると思っていましたが、頭を作って顔を専門に描く頭(かしら)師、頭に髪の毛をつけるのを専門にする髪付け師、手足を専門に作る手足師、最後に着物だけを作り、着付けする着付け師、これら四人の職人は、それぞれ別の所に住み、それぞれ別の門構えの工房を持っているのです。
このように一つの人形は四人の職人たちによって作られるのです。従って一セットの人形が売れても、その売り上げは多分四等分でしょうから経済的に見入りがいいとは考えられません。それでも江戸時代からの制作方法を受け継いでいるのです。先にあげた刀匠たちそしてひな人形を作る職人たち、彼らは自分の仕事を愛し、誇りを持ち、そして少しでも技術的にすぐれた製品を作り出すことに人生の意義を見いだしているのです。金儲けは二の次になっているのです。資本主義万能の時代にあえて逆らうような生き方をする。こういう生き方をする人たちが非常に多いのは現在の世界では日本だけではないでしょうか。こういう伝統が、現在のハイテック中小企業にも見られるというのがまた日本のすごさです。
日本の製造業の優秀さは今や世界的に知られています。その日本の製造業の優秀さを陰で支えているというのが、中小企業の技術の優秀さです。関東地方で中小企業のメッカと言えば、東京の大田区です。ここでの中小企業の技術水準の高さを見学するための多くの外国人が大田区詣でをしていると言われています。米国視察団が大田区にやってきていくつかの中小企業を見学しました。彼らの質問の中に、経営者はなぜ会社を売ろうとしないのかというのがありました。アメリカ人はまず初めに自分で小さな事業を起こし、それを育て上げたらできるだけ高く売り飛ばし、新しい会社を買い、利益をあげればその会社を売り飛ばし、さらにまた他の会社を買うとかして大金持ちにのしあがっていくのが多いと言われています。
ところが日本の中小企業の経営者、特に技術を持つ製造業では、必ずしも金もうけだけが目的でない場合が多いい。勿論経営者は一生懸命金儲けしなければなりません。さもないと倒産してしまいます。しかし経営者には金儲けと同時にその仕事に自分の人生の意義が込められているのです。仕事と人生が表裏一体になっているのです。だから良い技術を持って、利益をあげているから高く売ろうと思えば、売れるけど売らないのです。中小企業の経営者は、社員とは家族の一員のような密接な関係になります。その従業員を見捨てて、会社を売って自分だけ大金持ちになることは日本の社会ではあまり歓迎されません。同じ中小企業の経営でもアメリカと日本では労働観が違うので金儲け一点ばりでは通用しません。
欧米人と日本人との労働観の差には大きなへだたりがあります。欧米人のゴッドが人間を作り出した時、人間は働かなくても暮らしていけたのです。ところがアダムとイブがゴッドの禁じた「禁断の実」を食べたので、ゴッドがアダムとイブに罰として与えたのが労働、すなわち働くことなのです。それ以来人間は働かなくては生きてはゆけなくなったのです。
ですから働くことに懲罰の意味が込められています。従って汗水流して働くことはもともと卑しいことであまり誉められたことではないのです。奴隷制度が発達したのも欧米人の労働観が原因の一つではないかと思われます。できるだけ奴隷にはたらかせて自分が楽をするのが幸せと考えるのです。こういう発想ですから欧米人は仕事をするということは、生活のため、金もうけのための手段であってそれ以外の何物でもない場合が多いいのではないでしょうか。
ところが日本では神様自身が働いているのです。「古事記」に出てくる男神、イザナギノミコトと女神、イザナミノミコトは日本列島を作り、人が住めるように一生懸命働いています。「古事記」にはその他働く神様が沢山出てきます。だから日本人にとって働くことは神聖なことで、日本人はむかしから汗水流して働くことはいとわないのです。そういう労働観があったので、日本では奴隷制度が発達しなかった一因もあるのではないでしょうか。日本人にとって働くことは、生活の糧を得るためとか金もうけのためだけの手段だけではなく、働く人の人生が込められていることが多いいのではないでしょうか。
いずれにしても金銭的利益に結びつかない伝統的技術をあくまでも守ろうとし、昔の人が作った物に負けない、あるいはもっと良い製品を作り上げることに自分の人生の価値を見いだそうとする日本人職人の真摯な姿勢。それにひきかえ支那人の物作りの姿勢を見てください。ヒットしているあらゆる製品の偽物を作り、偽物を買う人がいるから作るのだとうそぶく支那人。私は支那人に生まれなくてよかった。 日本人に生まれて本当によかったと思うのは、私一人だけではないでしょう。
この物づくりの真摯な姿勢が会社経営にも生かされるのでしょう、日本には非常に古い老舗といわれるお店や会社が非常に多い。帝国データーバンク等によると千年以上続いている老舗が七社もあるのだ。その中で日本最古、いや世界最古の会社が大阪で寺社建築を生業としてきた「金剛組」という会社です。創業が西暦578年、つまり飛鳥時代に創設されて以来1400年以上続いているのだ。創設以来2005年まで金剛一族で経営され、2005年に業績不振で高松建設の子会社になり「新金剛組」として活動しています。創業以来1400年も続いている会社が存在しているとはすごいではないですか。この「金剛組」のライバルが松井建設(東証一部上場)で創業が1586年(関が原の戦いが1600年)だという。鹿島建設や清水建設は江戸時代の創業です。
日本国内で200年以上の老舗となると三千軒を数え世界一です。第二位のドイツ800軒を断然引き離しています。支那9軒、インド3軒、韓国はゼロです。100年以上の老舗となると日本では2万2千軒を超えていると言われています。そしてその老舗の半数近くが製造業にたずさわっているというのです。日本には、なぜこんなに老舗が多いのか、それには当然歴史と文化の影響なくして考えられません。歴史の影響とは、日本が平和だったことです。歴史上日本には侵略と内戦の繰り返しのような時代がなかったからです。アメリカの歴史を見てください。建国わずか2百数十年でも200年以上つづいている老舗が14軒もあるのです。アメリカは南北戦争という大変な内戦があったが外国からは侵略されていません。内戦と侵略にあけくれた歴史を持つ支那と韓国をみてください。支那はわずか9軒、韓国ゼロです。世界最古の小説も世界最古の企業も平和なくして誕生しないのです。
次に日本の文化の影響を見てみましょう。考えられる文化の影響は:
1.継続を重要視する。
一流大学を優秀な成績で卒業しても、家業が何代も続く蕎麦屋なら、例え蕎麦屋をついでも大きな財をなすことはないとわかっていても平気で後を継ぐ。何代も続いた家業を継ぐのが当たり前のごとく常識のようになっているのです。
2.他人を信用する。
支那には、「有能な他人よりも無能な血族を信ぜよ」という格言があるが、日本には跡継ぎがいても、経営者として不向きなら養子を入れる習慣が老舗を長続きさせているのだ。
3.汗水流した労働を尊いとみなす文化。
この文化がすばらしい製造業を生む源なのだ。汗水流して働く人間を下賎扱いにする韓国には、200年どころか100年を超える老舗もゼロです。
4.金儲けがすべてではない。
最初にも触れましたが金儲けがすべてであったら老舗は絶対に存在しません。伝統を受け継ぐことを金儲けより優先させるこの心意気。
結論を言うと、共産主義経済が破綻し世界中が資本主義経済になり、グローバル競争という熾烈な経済競争の時代に突入していて、家業を継いだところで、また古い技術の後継者として精を出したところで大きな財を成すことはないことを承知の上で自分の全人生を投じていく日本人がまだまだ多くいるということは、すごい民族じゃないですか。また日頃金儲け仕事の没頭している多くの日本国民は、そういう人たちを軽蔑するどころか、尊敬の念を抱いているのだ。日本人とはすごい民族ではないですか。