労組嫌い(読者からのコメント)

先週私のブログ記事、「労組嫌い」を載せましたが、読者の中に元国鉄清算事業団職員の方がおり、その方からメイルをいただきましたので全文をそのまま公開させていただきました。

引用開始
「労組についての貴ブログを拝読しました。日産の凋落、国鉄破綻・民営化、JAL問題の本質などを広汎にご指摘され、同感頻りでした。ただ元国鉄、国鉄清算事業団職員として、若干所感を申上げます。
大きい動機は、官公労、就く日教組対応の貴重な参考例と考えるからです。国鉄問題の大きな流れは、1)戦前からの底流としては存在したが、国際共産主義運動の一環としての労働運動が米の占領政策もあって、戦後一気に拡充したこと(総評最強の実力部隊、国鉄労組出身国会議員は常に数名―現日教組には及びもないが)、2)S24年発足の国鉄は収入の基本である運賃決定権が国会にあって、自主権(権限もないが責任もない)がなかったこと、3)裏腹に職員の労働条件の第一である賃金決定権が経営者に無く(国鉄は官庁ではなく、電電・専売と共に3公社と呼ばれた公共企業体ー今風に云うなら3セクとか独法)、公共企業体労働委員会の斡旋・調停・仲裁により決定(公共企業体等労働関係法ー郵政などの5現
業も対象)、更に国鉄法で予算の範囲内と限定され、国会の枠内であり、経営側に労働関係の当事者能力がなかったこと、4)労働関係では、団結権と団体交渉権は法定されていたが、争議権は無く、裏腹に経営側にロックアウトなどの対抗手段もなかったこと、5)自動車の進歩普及・資金コストゼロの税金による道路整備に圧迫される一方、不採算路線・事業廃止の自由なく、原敬内閣以来の我田引鉄は消えなかったこと、などの環境や条件を挙げておきたい。

このことが経営側に労組癒着の感性のものが生まれる背景でもあった。ただ鬼の動労が実は経営側の組合分裂工作(失敗に了った)に発したように、この種試みはS20年代から度々繰り返されてきたこと(夜半までの隠密行動に疲れ、執務中急死した幹部も居る)、国
鉄改革の過程で中間管理職の、いじめや脅迫による自殺者が20名以上と推測されることは記しておきたい(この度政府は改革後JRに採用されなかった者に2千万円/人程の和解金を支払う。この自殺者のこと、シベリヤへの拉致被害者-2百万円ほど、を考えると到底納得できない。なお国鉄職員は、改革法で全員解雇。JR等が選別再雇用した)。

さて公務員改革とやらで、身分保証を廃し、労働3権付与が語られているが、上のような国鉄改革の経緯を省みるべきではないだろうか。争議権ある組合に解雇や就労禁止で対抗しきれるだろうか。民間企業の争議の歯止めは解雇や就労排除だけだろうか。小生は“昔陸軍、今総評”といわれた労働側が劇的に変わったのは第一次石油危機(S48)だと考えます。すなわち会社と自分たちは同じ蓮の葉に乗っていることにきづいたことです(社会主義や階級史観で飯は食えない)。では公務員にその契機はあるだろうか。雑な言い方をすれば2重系導入(民営化もその1つー例:社会福祉事業)に知恵を出すしかない。次に、使用者側に賃金などの労働条件裁量を委任しきれるかどうか。国などの公共団体は潰れてはならないから、結局裁量は限定的とならざるを得ない。今は、人事院などの機能に期待しているがその効果でさえ実は強制力なく、強大な労働団体に対抗する術を思いつかない。強いて探せば、志操確かな人材で組織を構成することだが、公務員を軽視する風潮から変えねばなるまい(己が利益追求を旨とする企業人と公務員を同じに見る叙勲制度などその例―“臣 茂”はもう現れない。尤も近年は、国家観などなく、私利私欲キャリアが氾濫)。人材については、知識量や口舌要領偏重の選抜や評価ではなく論文による志操考課が重要(
世界に冠たる官僚国家、フランスの採用試験は論文と聞く。マレイシアの高官は予備役国軍士官)。
ところで教員の職員団体は国鉄の労組と違うものがある。勿論身分保障のゆえに処分者補償不要で懐が非常に豊か、政界に大きな影響力を持っていることを別として、使用者側の権限が国・都道府県・市町村に分散し、教組は市町村等の単位で、一貫した労働政策・交渉実務が期待できないことと、中央交渉のような場が作れず、各地域団体が自活することを制御しきれないと思う(連続多発放火にも似たり)。
乱暴とは思うが、初等中等教育といえど民営化する手はないだろうか。私立学校は現に存在するのだから、これに欠けたるを補えばよいのではないか。研究すべきことと思う。
日教組対策にはドラスティックな変化しかなさそう。
以上思いつきにお目通し下さったことに深謝します。

<国鉄債務処理についてのご参考>
H19年度会計検査院検査報告―国鉄清算業務の財務
http://report.jbaudit.go.jp/org/h19/2007-h19-1206-0.htm
(独法)鉄道建設・運輸施設整備支援機構の特例業務
(該独法発足以前、国鉄清算事業団が業務としていた国鉄債務処理のこと)
改革初年度S62に競争入札土地売却を差止められたのは遺憾でした。国鉄共済の厚生年金加入持参金は莫大でした。国の一般会計からの債務償還は巨額ですが、国庫への長期返済は決まっています。19年度黒字額は1.3兆円ほどあり、これらが返済原資(民主党はこれに目を付け、前記過激労組員に補償させた)。なおタバコ税値上げに恩を感じ、元国鉄職員の禁煙を小生は嗜めています(W)。
今回、元動労天皇の小姓が参院当選したが、動労は革マル、代々木は内部闘争に敗れ、千葉動労などとして都落ちした。ある意味で斯る割拠が実は難物(ゲリラのようなもの)。
遵法闘争で信号の転換操作を遅らせたとありますが、普通の信号は列車間隔で自動的に変わる仕組み。それは不可です。
償却前経常赤字は確かS40年からで、モータリゼーションに対応できなかったこと(例:貨物輸送の縮小乃至近代化の遅れ)に始まり、石油危機後の人件費等コスト急増で急速に累積赤字著増。最長ストはS50年12月の8日間、所謂スト権スト。政府はこれに対抗、万全のトラック輸送体制を整え、東京の生鮮食糧需給に備えた。結果、国労は非難の的となり国鉄改革を引寄せた。遵法闘争ではS48年上尾駅で12000人の乗客らによる暴動がある。
S56頃から、自民党議員の現場点検、内閣の不退転意思、土光・亀井氏ら人格者と瀬島氏の緻密な工作、国鉄内決起者出現など、改革成功には幾つもの要因。債務処理に国が今も1兆円余払っているというのは誤解があると思います。お時間があれば会計検査院検査報告にお目を通して下さい。以上」引用終了

お知らせ:
次週、9月12日は「労組嫌い」(2)を載せます。前回とは違う観点から労組について語ります。その他に次の短編小説予告も載せます。

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