保守の知識人の中に「大東亜戦争」という言葉を使わずに平然と「太平洋戦争」という言葉を使う人がかなりいます。東京裁判史観を否定しているくせに太平洋戦争という言葉を平然と使っているのです。私にとっては実に腹立たしい。大東亜戦争という言葉は、真珠湾攻撃四日後の昭和16(1941)年12月12日に当時の内閣が、
「今次ノ対米英戦争及今後情勢ノ推移ニ伴ヒ生起スルコトアルヘキ戦争ハ支那事変ヲモ含メ大東亜戦争ト呼称ス」
と正式に大東亜戦争と命名したのです。
ところが敗戦の年の昭和20(1945)年12月15日にアメリカ日本占領軍(GHQ)は、
「公文書ニ於テ『大東亜戦争』『八紘一宇』ナル用語乃致ソノホカノ用語ニシテ日本語トシテソノ意味ノ連想ガ国家神道、軍国主義、過激ナル国家主義ト切リ離シ得ザルモノハ之ヲ使用スルコトヲ禁止スル、而シテカカル用語ノ即刻停止ヲ命令スル」として「大東亜戦争」という言葉の使用を一切禁止し、彼らの使用している「太平洋戦争」という言葉を押し付けた。
なぜアメリカ日本占領軍(GHQ)は、大東亜戦争という言葉の使用を禁止したか。それは大東亜戦争というと東アジアの解放という意味が込められているからです。この言葉の使用を禁止することによって大東亜戦争史観を抹殺し、GHQは、検閲、焚書、東京裁判などあらゆる方法を用いて日本国民を洗脳し、太平洋戦争史観を押し付けたのです。
こんなこと百も承知の保守知識人の中に平気で太平洋戦争という言葉を使う人が大勢います。使う理由は、ほとんどが太平洋戦争という戦争名がもう世界語だという主張です。
平川祐弘氏、東大名誉教授は、自著「米国大統領への手紙」ではこう書いています。「日本が戦った第二次大戦を大東亜戦争という歴史が臭う言葉で呼ばずに太平洋戦争というアメリカ側の言葉を私が用いたことに不満を覚える向きもいるかもしれない。しかし敗れた戦さである」
まるで戦争で敗れたから太平洋戦争と言ってもしょうがないと言わんばかりです。
さらに平川氏はこう書いています。
「私たちはグアム島をもはや大宮島とは呼ばない。シンガポールを昭南とは呼ばない。日本以外の土地でthe Great East Asia War という語が通用しない以上、そう言い張ってみたところで所詮、井の中の蛙ではあるまいか。
この前の戦争について太平洋戦争というよりも大東亜戦争という呼び名の方がよく似合う点もありはしたが、私はその部分を拡大して全体をおおうようなことはしたくない」
平川氏は地名と戦争名を一緒しています。地名など征服者によっていろいろ変えられます。このことよりも私が疑問を呈するのは、「日本以外の土地で通用しない以上、そう言い張ったところで所詮、井の中の蛙ではあるまいか」という彼の考え方です。
平川氏に伺いますが、ヴェトナム戦争、これ世界語でしょう。なぜヴェトナム人は、ヴェトナム戦争と言わず、アメリカ戦争(American War)というのでしょうか。日清戦争、これも世界語でしょう。しかし中国は日清戦争などと言いません。中国では中国の甲午の年に起きた日中間の戦争だから甲午中日戦争と呼びます。
アヘン戦争。これも世界語です。しかしイギリスでは、第一次英清戦争と呼んでいます。「セポイの反乱」歴史辞書では、この言葉で載せられています。しかしインドでは、「セポイの反乱」などの言葉は使われていません。第一次インド独立戦争と呼ばれています。中国人は、太平洋戦争と言う言葉も使わないし、大東亜戦争という言葉も使いません。使用している言葉は、抗日戦争です。
これらの民族は、なぜ世界語になっているような一般的呼び名の戦争名より彼ら独自の呼び方に固守するのでしょうか。その理由は、民族としての意地とか、こだわりとか、誇りのようなものが混在しているからではないのですか。太平洋戦争という呼び名を平気で使用する保守知識人の方々、あなたがたは、日本民族としての意地とかこだわりがないのですか。これは誇りの問題でもあるのです。
私は、なにもアメリカ人や中国人に大東亜戦争という呼び名を使えと主張しているわけではありません、日本人が先の戦争と言えば、大東亜戦争という呼び名しかないと主張しているのです。私の父の代の日本軍人は、大東亜戦争という名のもとに戦場で戦ってきたのであって、敵国が呼ぶ太平洋戦争あるいは日本の左翼の一部が主張している十五年戦争の名のもとで戦ったのではありません。
私は子供の時、防空壕に入った経験があるが、私が防空壕にもぐったのは、大東亜戦争の下に防空壕にもぐったのであり、太平洋戦争の下に防空壕にもぐったのではありませ。それを太平洋戦争などあっさり読んで、日本民族としてのこだわりはないのですか。
大東亜戦争のことは英語でなんというか、先ほど引き合いにだした東大名誉教授、平川祐弘氏は、the Great East Asia War と言っていましたが、この表現も悪くないが、直訳しすぎてなんとなく長たらしくぎこちない。
映画にもなった有名な小説、「ケイン号の反乱」を書いたアメリカのピューリッツァー賞受賞作家、ハーマン・ウォーク氏が自著の中で使っていた The Great Asian War, これは簡潔で使いやすい表現だと私は思います。
従って先の戦争と日本人が言えば、それは絶対に大東亜戦争のことでわり、英語で表せば、the Great Asian Warのことです。この二語に統一して世界に向けて堂々と使用することです。
世界に通用しようが、しまいが、これが日本人のこだわりであることを示せ。保守の知識人ばかりでなく、日本人よ、もっと自分の主張を前面に出して世界に向けて自己主張せよ、したり顔してよく考えもせずすぐに迎合、妥協ばかりするなと言うのです。