「つくる会」は健在なり(その2)

今回は、自由社(つくる会)と育鵬社(教育再生機構)の教科書の違いと「つくる会」首脳部に対する私の提案を書いてみました。

A 教科書の違い
1.育鵬社、公民教科書の致命的欠陥
安部政権のもとで60年ぶりに改正された教育基本法改正は、安部政権の善政の一つであった。その教育基本法改正で強調しているのが「愛国心」と「公共の精神」です。ところが自由社(つくる会)の教科書以外すべての公民教科書に「愛国心」と「公共の精神」という言葉が出てこないのだ。自由社以外で唯一の例外は、育鵬社で「地域社会と私」という単元の中に「各自が地域の一員として公共の精神をもつことが重要です」という言葉が一箇所だけ出てきます。本当にここ一箇所、一文字です。しかもその言葉の定義もなく、巻末の索引にも記載されていないのだ。事実上「公共の精神」など書かれていないのと同じです。いいですか、保守系と言われる育鵬社の公民教科書には「愛国心」も「公共の精神」も記載されていないのだ。「愛国心」も「公共の精神」も何十年間にもわたって公民教科書では無視されていた問題です。それだけに保守系の公民教科書に載せられて当然の重要な事柄です。「愛国心」や「公共の精神」は歴史観ではない。歴史観なら保守の間でも違いはある。「愛国心」や「公共の精神」は全保守陣営共通の主張事項です。そのことが同時に教育基本法の改正の主張と一致するのだ。
安部元首相も元首相だ。自分の政権下で自分の尽力の下にできた教育基本法改正で「愛国心」や「公共の精神」を強調した。その安部は、「愛国心」や「公共の精神」など記載されていない育鵬社の公民教科書を支持しているのだ。安部が自由社や育鵬社の教科書を読まず、八木にまんまとたぶらかされているのに気がつかないのだ。保守の知識人たちも、採択戦中は育鵬社に不利になるから育鵬社の公民教科書を批判しないのなら話はわかります。ところが教科書採択戦が終わった現在でも「愛国心」も「公共の精神」も記載されていない育鵬社の公民教科書を批判しようとしないのです。育鵬社の背後にあるフジサンケイグループを恐れているのでしょうか。私は、著名な保守知識人に言いたい。若いうちなら自分の身のかわいさで発言したり、行動するのも良いでしょう。しかしもう50歳もすぎたら、自分の身の可愛さあまりに右往左往するのはやめたらどうか。自分の国に対する思い、考え、信念などを貫き通したらどうですか。左翼の知識人には、「バカの一つ覚え」とか「バカはしななきゃわからない」とか言った幼稚さはあるが、その信念をつらぬいているではないですか。保守の知識人には、その一徹さがない。たまたま今月で私がブログを書いて満三年、来月から4年目が始まります。これまで私はブログで保守知識人をほとんど批判してきませんでした。保守どうし喧嘩してもしょうがないと思ったからです。しかし今年の教科書採択戦で保守知識人の情けなさを知りました。彼らの一部は時代に迎合し少しづつ左に向かおうとしている気配さえ感じます。これからは自分のブログで保守知識人の個人名をあげてするどく批判していくつもりです。

2.自由社、育鵬社の歴史教科書の違い
(1)水田稲作の始まり
育鵬社は、旧説を踏襲し「大陸や朝鮮半島から九州北部に水田稲作がもたらされた」としています。これは新たな考古学的発見によって完全に覆されている。自由社は、2500年前に稲作が始まったとして日本の稲作は朝鮮より早い。
(2)神話の扱い
育鵬社は、神話は本文に出てこない。読み物コラムに登場するのみ。自由社は本文2頁を使って神話をとりあげ、古墳、大和朝廷の始まりとの関連で説明している。天孫降臨と神武天皇を扱い、神々の系図をイラスト入りで掲げ、神武天皇について分かりやすく理解できるようになっている。
(3)倭の五王による南宋への朝貢
五世紀、倭の五王が南宋に朝貢していた。自由社は、「宋書倭国伝」を紹介しています。当時日本は半島に対して優位な位置を占めていた有力な史料です。ところ育鵬社には、この倭の五王の記述がない。
(4)聖徳太子
自由社は本分4頁で詳細に説明、これに対して育鵬社は、2頁のみ。
(5)「日本」という国名のおこり
自由社は2頁で克明に説明しているが、育鵬社は、2行のみ。
(6)外国人の見た日本
自由社は合計18人の外国人の記録を紹介しているが育鵬社は、わずか7人。
(7)満州事変
満州事変がなぜ起きたかについて「リットン報告書」、米外交官マクマリーの「平和はいかにして失われたか」は絶対欠かせない史料であるにもかかわらず、育鵬社は無視。
(8)日中戦争
全体的に日中戦争に関する育鵬社の記述は不十分。通州事件、ドイツ軍事顧問団の存在と役割、「事変」の意味などの記載は一切なし。盧溝橋事件、上海事変、蒋介石の援蒋ルートなど記述不十分
(9)戦争の呼び名
自由社、「大東亜戦争」(太平洋戦争)、育鵬社「太平洋戦争」(大東亜戦争)
(10)連合軍の戦争犯罪
自由社は、東京大空襲、原爆などは戦時国際法違反、「20世紀最大の戦争犯罪」であると、ソ連の60万の日本人のシベリア連行も戦争犯罪と記述。しかも連合軍側のこうした戦争犯罪は一切裁かれることなかったと記述。育鵬社は、無差別爆撃が国際法で禁じられていることを言及しているが、それを戦争犯罪と明言せず、またそれが裁かれていないことを言及せず。
(11)検閲と東京裁判
自由社は両方記述しているが、育鵬者は東京裁判のみ。
(12)共産主義
自由社は、共産主義の本質と犠牲者数を記述。育鵬社は、共産主義国家の崩壊を記述するだけ。
(13)昭和天皇
自由社は2頁にわたって、育鵬者はわずか1頁、重要視の程度が違う。しかも自由社は、「昭和天皇―国民とともに歩まれた生涯」というタイトルをつけているが、育鵬社は、「国民とともに歩んだ昭和天皇」というタイトル。自由社は敬語を使っているが、育鵬社は、敬語を使わない。(この項は、「史実を世界に発信する会」の茂木弘道の論文を借用しました)

B.私の提案
わたしの提案は、そんなおおげさなものではありません。ただ「つくる会」自体が、あまりにも世間に知られなさ過ぎるということをつくづく感じています。それでは世間に「つくる会」の存在をもっと知らしめるには、どうしたらよいか。また「つくる会」を半ば恒久的に存続させるためにはどうしたらよいか。この二点に関するのみを焦点にしぼって私の提案をしてみました。
1.日教組との対決を鮮明にする。
9月の「つくる会」総会の時、私の前の席にいた人、奈良県代表の方、がどうも「つくる会」そのものの存在が世間によく知られていない。もっと「つくる会」の存在感を高める必要がある。そのための対策を考えねばならないという趣旨の発言をした。私はその方の意見に全く同感で、その方の意見の後、すぐに私がその続きの意見を主張しました。「つくる会」の存在感を高めるためには、「つくる会」の敵は、「日教組」である。現在の教育界を牛耳る日教組に挑戦する「つくる会」、すなわち「日教組」対「つくる会」の対決イメージを一般の人々に焼き付ける必要があると主張し終わったところで次の人の意見に移りました。自分の提案が、総会では充分に説明できなかったのでこのブログの場をかりて詳しく説明させてもらいます。

「日教組」対 「つくる会」の対決で考えられる事をアトランダムに取り上げてみました。
(1)「日教組」は、成人した日本人なら誰でも知っている名前です。その「日教組」に対決姿勢を鮮明にしている組織はない。そこへ「つくる会」が対決姿勢を明らかにすることによって「つくる会」の名前を売り込むことができる。
(2)「日教組」の何に対決するのか。教科書対決と政治姿勢対決です。左翼系教科書五社などと言わず、日教組系教科書五社と必ず呼ぶなどして教科書内容での対決、日教組の悪徳行為(選挙違反など)に対決する。
(3)対決姿勢を明確にするために街宣活動やデモを積極的に行う。2010年に起きた浜教組の暴挙に対して「つくる会」首脳部と神奈川支部は、横浜市教育委員会に抗議の手紙や請願書を送るだけが精一杯の抵抗だった。浜教組の暴挙を以下に簡単にまとめてみました。
2009年横浜教育委員会は、横浜市全18区のうち、8区の全公立中学校で「つくる会」の歴史教科書を使用することを決めた。しかし浜教組の抵抗は激しかった。浜教組は、「つくる会」の歴史教科書を使わない授業にするために、マニュアルすなわち「中学校歴史資料集」を独自に作成、それを一万人以上の市内の教師に配布した。さらにこの一万部以上の資料を「学校ポスト」を利用して配布されたのだ。「学校ポスト」とは横浜市が年間5300万円の費用をかけているポスティングシステムで教育委員会事務局と学校間の公務用事務連絡のためのものであり、組合活動や教職員の私的利用は厳禁なのです。要するに浜教組は、「つくる会」の教科書を使わせないために、市民の税金を盗用したのも同然の行為をした。これに対し横浜市教育委員会は、浜教組に警告書をだしたが、一万部以上配布した「中学校歴史資料集」の回収は命じなかった。「つくる会」首脳部は、横浜市教育委員会に抗議の手紙や請願書を送るだけだった。その後も浜教組は、名前を変えて新「中学校歴史資料集」を二度、三度と出版した。その上、横浜各地で「つくる会」教科書の反採用活動を行っていた。要するに浜教組の傍若無人な振る舞いが続いたのです。(詳細参照:2010年7月10日、私のブログ、「浜教組の違法暴挙」)。こういう時こそ、日教組と対決するために、また「つくる会」の存在感を示すためにも浜教組ビル前で街宣活動やデモを強行し、浜教組の責任者の面会を求めるべきではなかったのではないでしょう。そうすれば浜教組の傍若無人な振る舞いを少しは牽制できたのではないでしょうか。

(4)街宣活動と言えば、東京支部や三多摩支部の活躍はすばらしい。私もその街宣活動に参加したことがあります。今度理事になられた石原氏は、この街宣活動を率先して率いていました。今度は、日教組本部前で街宣、デモ、あるいは「新しい教科書」を売るのです。
(5)「つくる会」が初めて「新しい歴史教科書」を世にだしたのは平成13年でした。その時の採択率は実に0.039パーセント。今年の採択戦では0.08パーセント、公民教科書は0.05パーセント。年表盗作が足を引っ張ったことはたしかです。しかしこの10年間採択率にまったく変化なし。それに育鵬社あわせても採択率5パーセントです。すなわちいまだ95パーセントは、日教組好みの教科書です。まさに絶望的数字です。4年後の「つくる会」はまさに存亡にかかわる重大な年です。なにか抜本的な対策が必要ではないでしょうか。

(6)私は、皆さんにお聞きしたい。日教組という強力な組織が存在しながら保守系の教科書が採択年ごとに延びていくことが予想できますか。私はできないと予想しています。私たちの敵は、教科書会社ではなくて日教組ではないのでしょうか。
(7)人によっては、日教組と対決することは、教科書闘争に政治闘争を加えることになるからよくないというかもしれません。私は教科書闘争イコール政治闘争だと思っています。日教組は政治闘争で勝利をおさめているから日教組系の教科書会社がはびこっているのではないでしょうか。私の記憶が正しければ、現在日教組出身の議員が9名います。日教組の組合員は、減少していますが、力は以前より強力です。

(8)私は、日教組対決を鮮明にすることを奨励しますから、そのメリットばかり強調しますが、その反対者は、デメリットを沢山お持ちだと思います。メリット、デメリットをよく比較していただいて結論をだしていただけたらと思います。今度理事になられた私の尊敬する伊藤玲子先生は、鎌倉市議時代から一貫して日教組と戦ってきた人ですので、この私の意見に賛成してくれるのではと思っています。

(9)最後に再確認したいことは、日教組と対決姿勢をとることは、「つくる会」が日教組を潰そうとすることではありません。「つくる会」にそんな能力はありません。ただ対決姿勢をとることによって日教組に多少ともダメージを与え、反面「作る会」の知名度をあげるための手段であることを認識していただきたい。

2.財界への働きかけ
4年後の採択戦で、「つくる会」の教科書の採択率が急激に増えることはないでしょう。もし急激に増えるようなことがあったら、それこそ今流行りの言葉、「想定外」のことでしょう。「つくる会」の資金を個人にあてにしていては、じり貧になることはもう必須ですし、もう限界に近づいています。財界は、日教組のように全員左翼ではないはずです。国に深い思いを抱いている人もいるはずです。その人たちは、仕事のてまえ(支那ビジネスのための遠慮などで)思い切って口では言えない人も多いはずだと思っています。「つくる会」の首脳部は、それこそ会員に内緒にしてでも財界の一部、例え数人でも取り込むことが必要ではないでしょうか。首脳部の教科書に対する熱い思いや、地方支部で採択戦の最前線で戦っている熱い情熱などをパンフレットにして、これはと思う財貨人に内緒に面会し配ったりしたらどうでしょうか。またあらゆるつてを頼って財界人にこっそり面会を求め、我々の教科書に対する思い、国家に対する思いや情熱を持って語るのです。恐らく首脳部も極秘のうちにこういうことを始めているでしょう。これからは、さらに財界への極秘の働きかけを強めたらいかがでしょうか。

首脳部が資金不足、人材不足に陥りながらも最大の努力をしてきということは、百も承知で、自分の言いたいこと主張してきました。そのため首脳部には腹立たしい思いをさせたことでしょう。ここでお詫びを申し上げます。首脳部の皆さん、神奈川支部はじめ、全国の支部の皆さん、この4年間本当にご苦労様でした。またありがとうございました。私は神奈川支部の一会員で、私には時間的余裕があまりないので、できることは微力ですが、これからも「つくる会」の熱烈な支持者として活動していくつもりです。皆さん、四年先をめざしてがんばりましょう。

最後に読者には、一人でも多く「つくる会」に参加していただけたらとせつに思っております。前回のブログで一人年間会費12,000円と書きましたが、この金額は総会に出席したい方の年会費で、総会に参加しない方は、年間6,000円です。その他学生会員と家族会員は、年間3,000円もあります。どうぞご自由に選んで入会していただけますよう心からお願い申し上げます。一般庶民の国に対する熱い思いで作る「つくる会」の教科書に絶大なご支援のほどお願いいたします。

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