今年は、教科書業界が使う業界用語、「教科書採択戦」の年です。即ち来年の4月から向こう四年間、学校でどの教科書を使うのか決められる年なのだ。どの教科書を使うのか、その決定権は各地の教育委員会にある。「新しい歴史教科書をつくる会」、通称「つくる会」、読者の方はすでにご存知と思いますが、私は、この「つくる会」の神奈川支部の一会員です。「つくる会」は、歴史教科書ばかりでなく、今年は新しく公民教科書を作成、文科省の検定に合格し、この二つの教科書をひっさげて今年の採択戦に参加した。出版社は前回同様に自由社を担いだ。「つくる会」に相当すると思われる保守グループ、「教育再生機構」は育鵬社を担いで「つくる会」と同様、歴史教科書と公民教科書をひっさげて採択戦に参加。育鵬社は、かって「つくる会」の教科書を発行していた扶桑社の子会社で、教科書の執筆メンバーもかって「つくる会」に属していた人たちが中心になって構成している「教育再生機構」の人たちです。従って自由社(つくる会)と育鵬社(教育再生機構)の教科書は、お互い似た者どうしの教科書になるだろうと思われていたし、また保守勢力同士の戦いでどちらに軍配が上がるか非常に注目された。今年の8月末には教科書採択戦結果の大勢が決まった。保守同士の争いに限って言えば、育鵬社(教育再生機構)の圧勝、自由社(つくる会)の実に惨めな惨敗であった。採択戦の結果を数字で示すと:
育鵬社(教育再生機構)
教科書採用学校数: 合計427校、歴史教科書 4万8000冊、公民教科書 5万冊
採択率(シェア) 歴史教科書(3.9%)、公民教科書(4.1%)
自由社(つくる会)
教科書採用学校数: 合計10校、歴史教科書 895冊、公民教科書 595冊
採択率(シェア) 歴史教科書(0.08%)、 公民教科書(0.05%)
自由社(つくる会)惨敗の原因
1.惨敗の最大の原因は、自由社版教科書が東京書籍の年表を盗用したニュースが出、それを「つくる会」が認め、東京書籍に謝罪したことです。このニュースの発端とその後のニュースの展開を追うと次のような経過になります。
平成23年
5月26日 ネット上で、「正統保守の敵『つくる会』一部首脳を追撃します」というタイトルで「新しい歴史教科書をつくる会」が自由社から出した教科書は反日自虐。フジサンケイグループ育鵬社こそ正当保守の教科書です」という長たらしいサブタイトルがついているブログに「東京書籍の年表を盗用した自由社版教科書、記述検証」という記事が掲載された。記事には、自由社は「著作権侵害ですから、採択から撤退することをお薦めします。東京書籍と文部科学省には連絡しておきました」と書かれていた。
皆さんに注目していただきたいのは、この5月26日という日にちです。教科書採択戦の大勢は、ほとんど8月末にわかります。そのころになると各教育委員会がどの教科書使うか公表するからです。ということは、5月26日ごろは採択戦の真っ盛りの時です。「つくる会側にダメージをあたえるには最良の時期です。偶然にしてはあまりにもできすぎている感じがいなめません。しかも自由社側で年表を盗用したという松本という男は、2年前すでに退社しているのだ。すなわち彼は、平成13年検定合格した東京書籍の中学校歴史教科書の歴史年表をそのまま引き写しをしていたのだ。それを隠して退社してしまった。「つくる会」の古い幹部によると自分は、この松本という男から誹謗を受けたと言う。その松本の誹謗が、教育再生機構側のブログに次々に転載されたと言うのだ。要するに松本という男は、教育再生機構側にも知られた男なのだ。松本は、「つくる会」に恨みをもったか、あるいは教育再生機構の回し者のどちらかでしょう。この松本については、また後で触れることにします。その後のニュースの経過は次の通りです。
5月27日 ネット上で、「新しい歴史教科書をつくる会WATCH」という左翼側が開設しているブログに、上記記事をもとにした「自由社版教科書が東京書籍の年表を盗用」という記事が掲載された。
6月13日 「子どもと教科書全国ネット21」が横浜で記者会見、朝日新聞が自由社取材。「つくる会」首脳部事実関係を確認し、「事実を認め、謝罪する」方針を決定。
6月14日 朝日新聞のみが報道。
6月16日 「つくる会」首脳部、東京書籍本社を訪問、謝罪と経過説明。
6月22日 自民党横浜支部主催の「中学校教科書採択を考える勉強会」で教育再生機構の八木秀次会長が朝日の記事を配布して、5分間にわたり言及。
7月27日 衆議院文部科学委員会で、日本共産党の宮本議員が、年表問題について質問、赤旗が報道。
8月1日~8月2日 夕刊と朝刊でほとんど全ての新聞が年表流用問題を一斉に報道。
8月2日 「つくる会」緊急記者会見、「年表問題に関する『つくる会』の見解」を発表。報道はゼロ。
9月1日 自由社が年表6ページ分の訂正申請を文科省に提出。
要するにこの「つくる会」の年表問題は、左翼系五社の教科書会社に徹底して利用されたばかりでなく、保守系と言われる育鵬社にも五社以上に徹底的に利用されてしまった。
2.「つくる会」には、金もなければ人もいない。
教科書つくりをする人たち、皆超忙し、どうしてもチェック体制に不備が出る。年表盗作をした松本という男は,時間節約のために盗作したのだという声もある。いずれにしても年表盗作を見逃してしまった首脳部の責任は思い。「つくる会」の資金は、全部全国に散らばる個人の年会費と個人会員や篤志家による寄付がすべてです。これに対して同じ保守系の育鵬社は、フジ・産経グルプの出版社で資金力は「つくる会」と雲泥の差です。
3.自民党が育鵬社(教育再生機構)を支持した。
数年前「つくる会」の分裂騒ぎをした張本人、八木秀次は、人間性が最低の男だと「つくる会」の会員の中では評判だ。私は彼の顔を写真では知っているが会ったこともないし、話したこともない。横浜で講演があったが、そんな男の講演など聴きたくもなかった。そういう男だから弁舌さわやかでロビー活動には適した男なのだろう。彼は安部元首相を丸めこんだ。安部は首相在職中に戦後レジームの打破と言って、教育基本法を60年ぶりに改正した。ところが自由社(つくる会)を含む歴史教科書全七社のうち、教育基本法に最も忠実に基づいて作った教科書が自由社の教科書なのです。安部元首相は、自由社の教科書も育鵬社の教科書も読まず、八木秀次の話を聞いただけで育鵬社を支持してしまったのだ。バカとしか言いようがない。安部の育鵬社支持は、自民党議員への影響力は大きい。彼らは、教科書など読みはしない。有力者が推薦したらなだれを打って従うだけです。私が恐れるのは、年表盗作や惨敗などで、自由社(つくる会)の教科書より育鵬社(教育再生機構)の教科書の方が良い教科書なのだという印象を持たれることです。
9月18日(日)、東京虎ノ門で「つくる会」の総会が開かれた。私も参加した。その総会で私が奇異に感じた点が三つありました。
1.年表盗作問題で責任をとって藤岡会長が辞任した。そのことは総会開く前から知らされていたから驚きではない。私が驚いたのは、年表盗作者についてなにも触れなかったことです。盗作者が松本という名前も私は古い幹部から聞いたから知っているだけです。盗作者の名前も、その人柄も、在職中に「つくる会」と何かトラブルがあったのか、なかったのか、あったらどんなトラブルなのか、二年ほど前に退職していたと言うが、盗作発覚後彼と連絡がとれたのか、とれなかったのか、居所がわかっているのか、わかっていないのか、法的に彼を罰しようとするのか、しないのか。何一つ話さなかったのか。私など彼を八つ裂きにしたいくらいです。他の会員たち、特に地方支部の幹部で直接採択戦に関わった会員たちも怒り狂っていることでしょう。ところが首脳陣は、盗作者についてなに一つ発言しなかったのだ。「臭い物に蓋」式の何かを隠していると思われてもしかたがない。このままに放置しておくと、「つくる会」は盗作者を擁護していると吹聴され、4年後の採択戦にまで影響が及びます。法的に厳しく罰してこの問題にけりをつけるべきです。居所がわからなくても法的処置だけはしておくべきだと思います。
2.年表問題、採択戦の大惨敗などで今年の総会は、紛糾するだろうというぐらいは、誰も想像がつくはずです。だから首脳部は、総会の時間を例年より長くして、特に質問時間を長くして、そして首脳部もそれに対して堂々と見解を述べるべきだったと思います。ところが質問時間を長くしようなどという配慮がなく、いざ質問の時間になると、もう総会の時間のゆとりがなくなり、「もう時間もないので、手短に、簡単に」などと言われて会員と首脳部とのやりとりが充分行われなかった。私は、首脳部は、今年の総会はもめそうなので、時間を長くする配慮をするどころか早く穏便にすませたかったのだと解釈しました。私など、その後に開かれた懇親会など半分の時間でよかったとすら思っています。
3.総会の出席者全員に渡された書類、「今年度事業計画及び予算の件」の中で以下のような文章が書いてありました。
「この際、特に指摘しておきたいのは、採択戦の中で私たち「つくる会」の取った一つの方針です。今回の年表問題で左翼勢力がネガティブキャンペーンを激しく行いました。左翼勢力がこのようなネガティブキャンペーンを行うのはいたしかたありませんが、自由社とともに保守系教科書を発行した育鵬社も残念ながら、このキャンペーンに積極的に加わりました」
首脳部は、教育再生機構の頭が八木秀次であるかぎり、また彼の人間性を考えれば、彼は「つくり会」をつぶすことに全力をあげ、年表盗作など絶好の好機と利用するのはあたりまえと理解できるはずです。八木との競争共存、あるいは共存共栄などあり得ないこと知っているではないですか、なにが「育鵬社も残念ながら」なのですか。次の文章を見てみましょう。私をガックリさせる以外のなにものでもありません。
「著作権問題でいえば、今回発行された育鵬社の『中学社会、新しい日本の歴史』は、「つくる会」側が著作権を有している平成18年、扶桑社発行の『改定版新しい歴史教科書』と酷似したところが多々あり、そこに著作権問題が発生する疑いがありました。しかし「つくる会」は、保守系教科書の伸長を願って、保守同士の非難合戦をやめるべく、この問題を告発しないことを方針にしました。この方針は、育鵬社が年表問題を利用して積極的にネガティブキャンペーンをしている事実を把握した後も堅持しました」
首脳部は、自分たちは、保守同士の非難合戦をやめて紳士的に戦ったと言いたいつもりなのでしょう。採択戦に勝っていたら実にすばらしいセリフですよ。惨敗後では泣き言以外のなにものでもありません。私は主張したい、これからでもいいから法的に戦ってもらいたい。世間では自分が悪くても先に法的に訴え、負けそうになれば訴えを下げる場合もある。ある種の宣伝効果をねらってのことでしょう。八木は、この年表問題を徹底して利用してきますよ、だから法廷での勝ち負けは別にして育鵬者を法的に訴えなければなりません。このまま黙っていたら「つくる会」が不利になるだけです。
首脳部の文章は、さらにこう続くのです。
「育鵬社としては、この問題に関し、本来は中立的立場を貫くか、あるいはさらに、この年表問題は通常の著作権問題でなく、本来何ら必要をともなわないところで起きた一時的な流用問題であろう、等のコメントを発表するなど、問題を緩和する方向で行動していただくのが、同じく保守系の教科書をつくっている会社として道徳的ではなかったかと思っております」
「つくる会」の首脳陣は、教育再生機構のトップの八木秀次という人物の人間性を充分知りぬいているのです。それにもかかわらずこんなきれいごと書いてすましている。私には腹の立つ文章です。首脳陣は、皆紳士です、信念もある、いかんせん闘争心が不足しているのだ。信念と闘争心とは次元の違うものです。要するに自民党の谷垣総裁に似ているのだ。谷垣は、けんかのできないタイプの人間です。だから喧嘩になってもその喧嘩場にふさわしいけんか言葉が使えない人間です。そこえいくと八木はえげつない人間だが、闘争心が旺盛なのかもしれない。「つくる会」以外の人たちにも知れ渡るように「つくる会」全体で八木を憎み、きらうのです。そうすることによって世間の人たちは、八木への人間性に疑問をいだかせるようにすべきです。八木への一点集中攻撃です。それがなんです。この文章、私には泣き言を言っているとしか思えません。
私はここまで首脳陣を激しく批判してきました。しかしだからと言って私は「つくる会」を去るつもりは毛頭ありません。夫婦喧嘩と同じでどんなに女房を厳しく批判しても分かれるつもりは毛頭ないのと同じです。また総会に参加した会員たちは、惨敗にもかかわらず、皆意気軒昂で心強かった。かって「つくる会」は、産経グループの扶桑社から教科書出版していました。「つくる会」が分裂した時、扶桑社とも手がきれた。この時「つくる会」を担ぐ出版社が現れないのではとも思われていた。また「つくる会」に残った保守知識人は、保守言論界から干されるのではという恐れもあった。そのため自分の身のかわいさあまり多くの著名な保守知識人が「つくる会」を去っていった。しかし残った「つくる会」の現首脳陣は、自分の身のかわいさより新しい歴史教科書作りに命をかけたと言ってもおおげさではない。「育鵬社」の教科書作りに関わった人たちは、育鵬社からいくらもらっているかは知りません、しかし「つくる会」の教科書作りに関わった首脳部は、全員無給です。まさに国家に対する奉仕、これほど貴重なボランティア活動はない。前にも触れましたが、現在「つくる会」は資金難です。資金源は、全国に散らばっている会員の年会費12,000円です。それに会員が個人的に寄付してくれる金額が加わります。今年の採択戦惨敗で会員数が減る可能性もあります。「つくる会」の教科書は、日本の将来のともし火です。このともし火を決して消してはなりません。私は多くの若い人に会員になってもらいたいと思っています。現在会員拡大中です。ぜひお願いします。「新しい歴史教科書をつくる会」の電話、ファックス、ホームペイジは以下のとおりです。
TEL.03-6912-0047、FAX.03-6912-0048
http://www.tsukurukai.com
資金不足を補うために首脳部は、次の採択戦までの4年間限定の年会費100,000円の「大黒柱会員」を募っています。すでに会員の中には応募している人もいます。私もこれに応じたいのだが、できなくて残念です。私には計画があるのです。自己宣伝になってしまいますが、私は、大作「大東亜戦争は、アメリカが悪い」を来年英文出版するつもりです。現在、英文原稿は、「史実を世界に発信する会」の茂木氏のところでチェックしてもらっています。そのチェックは来年三月末に終わります。現在、日本に大使館、領事館を置いている国は全部で194ヶ国あります。英文出版したらアメリカの駐日大使、ルース氏を筆頭に194ヵ国全部に配るつもりです。それだけで200万円を超えます。さらに欲を言えば外国の著名な図書館にも贈りたい。女房はしぶい顔です。読んでもらえるかどうか、いゃ読んでもらえない方が断然多いでしょう、そんなことに年金暮らしの定年サラリーマンが大金をかけるのです。女房の気持ちはわかります。だから「つくる会」に私が提供できる金額は、年会費プラスアルファぐらいになってしまいます。
最後に育鵬社と自由社の教科書の違いと首脳部にお願いしたい私の基本戦略を書くつもりでしたが、長くなってしまいますので次回(10月23日)に書くことにします。前に「つくる会」の教科書を潰すわけにいかないと書きましたがその理由の一端を書いてこのブログ記事を閉じます。
歴史教科書は自由社と育鵬社を含めて7社あります。自由社以外6社共通の事項があります。何だと思いますか。中国人名、朝鮮人名、あるいは中国、朝鮮の地名、あるいは国名にルビ表記していることです。例を挙げましょう。ご存知、蒋介石という人物がいます。東京書籍は、教科書会社の中で最大のシェアを誇る会社です。この東京書籍の歴史教科書では、蒋介石という漢字の上に「チャンチェシー」とルビをふり漢字の下に「しょうかいせき」とルビをふっているのです。しかも歴史教科書の巻末の索引には、「シ」ではなく「チ」のところに人名として出て来るのです。だから中学生はいやでもチャンチェシーを覚えこまされるのです。そうなると世代間の知識の断絶が生じ、親子で歴史の話ができなくなるわけです。保守系といわれる育鵬社の教科書はどうなっているかというと、蒋介石という漢字の上に「ショウカイセキ」とルビをふり漢字の下に「チャンチェシー」とルビをふっています。このことは自由社以外6社共通です。「ふざけるな!」と言いたい。「一体こんなことして中韓の歴史教科書が、日本人名や地名にわざわざ日本語読みのルビをふってくれると思っているのか。どこまで中韓に媚びればいいというのか」と私の心には、野獣にも似た激しい怒りがわいてきます。さらに東京書籍の音楽教科書には、今年初めて韓国の歌が記載されているのです。
愛国心に燃える若い諸君、私の怒りに同意するでしょう。日本の漢字には、日本の読み方があるのだ。この日本語式読み方に徹しているのが自由社(つくる会)の教科書だけなのです。だからこそ、私たちは、自由社(つくる会)の教科書は、日本の将来のともし火なのです。決してつぶしてはならないと主張する私の気持ちが理解できるでしょう。若い諸君、ミクシーで論じ合うのも大いに結構。しかし行動を一つ起こしてほしい。年間12,000円はらって「つくる会」の会員になって「つくる会」首脳部を助けてほしい。年末のボーナス時期でもかまいません。よろしく、よろしくお願いいたします。(この稿は、次回のブログに続きます)