育鵬社歴史教科書支持派の皆様へ

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先月6月30日に「新しい歴史教科書をつくる会」の総会がありました。大きな議題の一つが育鵬社の歴史教科書の二つの問題でした。この二つの問題は、育鵬社の支持者の間では、あまりよく知られていないし、また知っていたとしてもその深刻度が理解されていないような気がしてなりません。そこでこの二つの問題を少し掘り下げて説明させていただきます。二つの問題とは盗作と南京虐殺事件です。

一。盗作問題
実は去年の教科書採択戦中に「つくる会」本部は、育鵬社の歴史教科書が「つくる会」が扶桑社から出版した「新しい歴史教科書」を盗作しているということは、正確な数はわからなかったが、盗作している事実は掴んでいました。一方「つくる会」の年表流用問題が発覚し激しい批判を浴びせられた。即謝罪し、年表を作り直し差し替えし会長は責任をとって辞任した。この「つくる会」の失態は、ネガティブキャンペインに徹底的に利用され、痛手を受けました。それでも「つくる会」は、育鵬社の盗作を公式には発表しませんでした。理由は、採択戦中「盗作」をネガティブキャンペインに利用して保守同志の足の引っ張り合いをしたくなかったからです。採択戦終了後も「つくる会」首脳部は、育鵬社の盗作を公表しませんでした。たった一つ公表先は、文科省への報告です。今年の3月30日のことです。保守同士の足の引っ張り合いをしたくなかったのでしょう。その間、つくる会の理事で、公民教科書の執筆者であり、また著作権の専門家でもある小山常実先生が、育鵬社の盗作を徹底的に調べ上げ、それを自分のブログに発表したり、あるいは盗作の事実を育鵬社関係者に手紙を書いたりしていました。また会員の中にも盗作をブログで発表したり、あるいは、育鵬社の歴史教科書の監修者に直接手紙を書いたりしていました。しかし育鵬社からは、ほとんど回答なし。一方「つくる会」首脳部もこの盗作問題について二つに意見が分かれました。盗作を公表して問題解決をはかろうとする方と盗作を無視して穏便に済ます方に分かれたのです。会員もこの二つにわかれましたが、なんと言っても公表して積極的に戦って解決する方が圧倒的でした。そして総会日、「つくる会」首脳部は最終決断を発表しました。育鵬社の盗作を社会に公表し、育鵬社と「つくる会」の執筆者どうしの話し合い解決を優先することを発表しました。著作権問題に直接関わる西尾幹二先生と藤岡信勝先生も話し合い解決優先に同意し、それでも解決つかなければ法廷闘争をいとわないこと誓いました。これで会員たちのもやもやした気分がふっとび、全員一致団結して次の教科書採択戦にかかれることは、一会員として喜ばしいかぎりです。

「つくる会」首脳部の公表によると育鵬社の盗作箇所は、全部で47ヵ所。いままで私はブログなどで全部で50ヵ所あまり、あるいは49ヵ所などと書いてきましたが、正式の発表によると47ヵ所です。内訳は以下の通りです。

          育鵬社の章       盗作箇所
        1.原始と古代       10ヵ所     
        2.中世           3ヵ所
        3.近世          11ヵ所
        4.近代           2ヵ所
        5.二つの世界大戦     16ヵ所
        6.現代           5ヵ所
                    計 47ヵ所

盗作と言ってもほとんど同じ考え方同士、文章が似てくるのは当然だろうと言う人もおりますが。それは全く見当違いであり、自分であまり文章を書いたことがない人のせりふです。どんなに同じような事を書いても自分の書いたものと、人の書いたものでは完全に違ってくるものなのです。盗作箇所47ヵ所という数字は、前代未聞の規模の大きさです。そして現在その盗作された教科書が学校の教室現場で使われているのです。こんな事があっていいのでしょうか。どう解決していくか深刻な問題です。著作権侵害は、かなり重い罪です。最高刑は10年です。なにより神聖な製品ともいうべき教科書に大変な数の盗作があるということは、まさには国家としてはずかしいかぎりです。これでは日本は韓国や支那に向かって日本製品をぱくっているなどとえらそうな口はきけません。それでも、私に言わせれば、純粋に国内問題です。次の南京事件に比べれば解決は楽です。南京事件は直接支那がからんできます。また支那ばかりでなく外国でも注視されていますから盗作問題以上に深刻です。

二。南京虐殺事件
今から2,30年前ぐらいまでは、南京虐殺事件は、日本国内でも「あった派」が優勢であった。「あった派」でもいくらなんでも30万人は大げさだろう、もっと少ないのではという声が圧倒的だった。そこへ秦郁彦氏の4万人説が出て多くの知識人がその説に飛びついた。テレビの田原総一郎氏もその口です。ところが1998年に南京研究者として有名な東中野修道氏が「南京虐殺の検定検証」という本を著した。彼は南京事件がなかったことを証明したのではありません。これが南京虐殺事件の証拠だという物件を全部徹底的に調べあげて、写真などすべての物件はデタラメであること証明したのです。その後も東中野先生や数人の研究者が南京事件の研究を進め、研究の成果や資料の発掘などで現在では、支那やNHKの御用学者や左翼を除いてほとんどが、南京虐殺事件はなかったというのが、少なくとも保守の間では常識になったのです。南京事件研究者は、東中野先生を含めてほとんど歴史の専門家ではありません。私は日本の大学の近現代史学者の怠慢ぶりは刑罰に値すると思っています。2007年発行の雑誌「WILL」の12月増刊号、『『南京大虐殺』に終止符』が、まさに南京事件のけりをつけたと言っていい。

ところが日本の歴史教科書では、南京事件を容認しないと文科省の検定合格がとれないのです。しかたがないから「つくる会」の歴史教科書は、南京事件については育鵬社の歴史教科書と大体似たような表現になっています。しかし結果として両教科書に同じような文章になるまでの過程には天と地の差があります。「つくる会」は南京事件を否定して書類を提出して、文科省の検定官と論戦しています。文科省の拠り所は、近隣諸国条項や歴史学会の通説などです。昨年の教科書検定の時、「つくる会」はある作戦をたてました。「通州事件」申請の中に入れたのです。「通州事件」とは日本人一般市民、老若男女が支那人に虐殺された事件です。「つくる会」は、南京事件を否定させてくれたら、この「通州事件」をひっこめるつもりでした。ところがやはり南京事件は否定できず、「通州事件」は認められたのです。戦後の歴史教科書で「通州事件」が記載されたのは、今回が初めてのケースなのです。南京事件を否定しようと戦った結果、いい意味での副作用を生んだのです。このへんの文科省検定官と「つくる会」執筆者のやりとりに興味あるかたは、「つくる会」公民教科書の執筆者、小山先生のブログを御覧ください。
http://tamatsunemi.atwerby.info/201207/article.4.htm

これに反し育鵬社は、違います。育鵬社は、教科書検定前から南京事件を公然と容認していたのです。昨年の7月20日、河村名古屋市長の肝いりで名古屋で中学校歴史、公民教科書討論会が開催された。教科書会社で出席したのは自由社(つくる会)と育鵬社だけでした。この時育鵬社の歴史教科書の監修者の一人である石井昌浩氏(元拓殖大学客員教授)は、こう語った。
「南京事件は確かにありました。日本軍によって中国軍人や民間人に多数の死傷者が出ました。これは事実です。ただ犠牲者の数などの実態については、様々な見解があり、今でも論争が続いている。これが育鵬社の南京事件についての記述です。」
皆さん、驚きませんか。自ら保守と称する育鵬社の歴史教科書の監修者の言葉ですよ。名古屋に引き続いて東京でも教科書会社の懇談会の席でも同じような発言をしているのです。
石井氏の冒頭の発言、「南京事件は確かにありました。日本軍によって中国軍人や民間人に多数の死傷者が出ました。これは事実です。」
これはまさに文科省の見解であり、左翼の見解であり、支那の見解です。それと同じ見解を保守が示しているのです。ここで読者にはっきり認識してもらいたいことがあります。「つくる会」の歴史教科書も育鵬社の歴史教科書も南京事件の記載については、ほぼ似ていますが、「つくる会」は、「なかった」説を変えないと検定合格がとれないから文言を変えざるを得なかったということです。いっぽう育鵬社は、「あった派」ですからそのまま変える必要なく文科省に受け入れられたということです。

育鵬社の歴史教科書を支持している方々に聞きたい。こんなこと許されていいのですか。これは我々保守に対する裏切りではないですか。この石井発言に対し育鵬社教科書を支持した保守知識人がいっせいに反論すると思ったら、ほとんど誰も反論しないのです。何故か?育鵬社のバックにいるフジサンケイグループに気を使っているのです。産経新聞にはコラムもあれば「正論という月刊誌もある、「正論賞」などという賞もある色々世話になることも多いいし、また世話になるチャンスもある。著名な知識人ですらフジサンケイグループに気をつかって反論できないのです。例をあげましょう。渡部昇一氏と櫻井よしこ氏です。二人とも「南京事件」「なかった派」の強力なメンバーです。渡部氏は、しかも育鵬社歴史教科書の監修者の一人です。育鵬社自身が南京事件「あった派」なのに批判できないのです。私は櫻井よしこ氏をかっていました。だから彼女の主宰する「国基研」のメンバーにもなった。「国基研」のあるパーティーでは彼女と名刺交換したいために列を作って並んでいたのを覚えています。彼女の集客力はすごいですよ。「つくる会」の歴史教科書の市販本には彼女の写真が載っています。育鵬社の歴史教科書の市販本にも彼女の写真が載っています。彼女は両教科書の支持者になったのです。私はそれに対して非難はしません。その桜井氏の南京事件に対する考えかたは、育鵬社の「南京事件あった」派とは完全に違います。それでも彼女は育鵬社を表立って批判できないのです。私がここで保守知識人不甲斐なさを責めるのは、南京事件はこれからも支那と論争し続けなければならない重要な外交問題だからです。日本民族の尊厳にかかわる最重要な問題でも、国内でさえ相手によっては非難の舌鋒がゆるむようで、どうして支那と論戦できるのかと言いたい。結局これは日本人知識人の弱点の現れでしょう。えらそうな事を主張していても結局は権威権力には弱いのです。フジサンケイグループが持つ権威、権力に堂々と反論できる著名な知識人が少なすぎるのです。育鵬社の登場によって南京事件に対する保守の一画がくずれてしまい、ますます日本は不利な体勢においこまれてしまったのだ。育鵬社教科書を支持する方々に私は、はっきり主張します。私も保守同士お互いけんかはしたくはありません。だから大東亜戦争を太平戦争と記載したこと、漢字の支那語読みや朝鮮語読みのルビの問題、私は片目をつぶります。盗作も国内問題、しかし南京事件容認は、これは絶対に許すことはできません。日本人の敵です。それに私は、日本民族の尊厳を救ってくれた東中野先生を初めとする数人の南京事件研究者に感謝の念を抱いています。それゆえに育鵬社の南京事件容認は保守への裏切りであり、日本民族の裏切りでもあります。絶対に許すことはできません。私は育鵬社の教科書支持者から嫌われるでしょう、それも覚悟のうえです。私は、「従軍慰安婦事件」と「南京事件」を日本人であるかどうかの踏み絵にしています。

最後に日本会議へ一言。日本会議は日本では保守最大の組織だという。私は日本会議が日本にとって良いことをしてきたことは認めます。しかし去年の教科書採択戦で日本会議は、「つくる会」を蹴って育鵬社を支援した。私はそのことについては批判する気は毛頭ありません。日本会議の首脳部は、育鵬社の教科書の内容に満足しているのでしょうか。公民教科書には「愛国心」や「公共の精神」は記載されず、歴史教科書にいたってはいままで述べてきたようなていたらくです。育鵬社が、南京事件容認であることを知らなかったのですか。知らなかったとしたら首脳部の怠慢です。ここで私はあなたがたにはっきり御聞きしたい。あなた方は南京事件容認派ですか、容認派でなければすぐにでも育鵬社に抗議してもらいたいし、そして縁え切ってもらいたいと思います。もし容認派であれば、あなたがたは日本民族の裏切り者であり、保守の看板をおろしてもらいたい。

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