皆さんは、とっくの間にメディア・リテラシー(literacy)という言葉をご存知でしょう。メディア・リテラシーとは、情報を評価・識別する能力とか情報をクリティカルに読みとれる能力の意味です。現在では嘘の情報(フェイクニュース)が溢れています。それだけにメディア・リテラシーが必要です。ニューズウイーク日本版では、日本人のマスコミ信頼度が欧米に比べて著しく高く、世論誘導されやすいと書いています。この言葉を利用して、私は、「知識人・リテラシー」という言葉、今回私が初めて使ったと自分で思っています。誰か私以外にこの言葉を使った人を知っていたら、一体、誰がどんな時に使ったが教えていただければありがたい。私が使う「知識人・リテラシー」とは、私たちは、その知識人がどの程度の人物なのか見極めているかを知るべきだと言う意味です。私は若い40代のころから日本の保守系知識人は、どうも権力者好みが多いと思っていた。そこで私のような無学で知名度が低い者が、日本の知識人は権力者好みと言うより、他の有名人、例えば外国人が私と同じことを主張している方を紹介した方がその影響力が大きいと思い紹介します。
その名は、オランダ人ジャーナリスト、作家のカレル・ヴァン・ウォルフレン。彼は1941年生まれだから、私より3歳若い。若い人は彼の名前を知らない人が多いかもしれません。彼が1989年に出版した「日本/権力構造の謎」(早川書房)は、英米で発売と同時に大きな話題を呼び、世界10か国に翻訳され、世界的ベストセラーになっています。
私は彼が大嫌いです。大東亜戦争日本悪者論に便乗し、オランダのインドネシア支配を肯定化し、丸山真男、小沢一郎、菅直人らを称賛しているのだ。私と彼と、その見解が一致するのは日本人知識人に対する見解だけです。ウォルフレン氏は、1995年窓社から「日本の知識人へ」という本を出版しています。まず一頁目から日本の知識人に対する見解が表明され、彼の見解と私とは全く同じなので思わず本屋で買ってみた。
彼の論文の一頁目のタイトルが、「なぜ日本の知識人はひたすら権力に追随するのか」
このタイトルは私の見解と同じです。私は40代ごろからこのような感覚を持っていました。このタイトルの後に、彼の次の文章が続きます。
引用開始
「日本では、知識人が一番必要とされるときに、知識人らしく振る舞う知識人が誠にすくないようである。これは痛ましいし、危険な事である。さらに、日本の国民一般にとって悲しむべき事柄である。なぜなら、知識人の機能の一つは、彼ら庶民の権益を守ることにあるからだ。」
引用終了
この文章の数行あとには、次のような文章が書かれています。
引用開始
「知識人として当然果たすべき役割を果たす知識人がいないかわりに、日本には沢山の学者、ジャーナリスト、ブンカジン(文化人)がいて――それと知ってしらずか――意図的な情報(プロパガンダ)をまき散らしている。この情報が日本人と外国人を共にまどわせ、世界における日本の立場と日本が直面する問題全般について、冷静にして客観的な見方が形成されるのを、ますます困難にしている。」
引用終了
これは彼の名言だと思っています。日本では最近あまり使われない言葉だが「御用学者」という言葉があります。辞書では時の政府や権力者に迎合して、その利益となる説を述べる学者と書いてあります。いくら有名な保守系学者だからといって「御用学者」ではないかどうか認識できるほどの知識人リテラシーを持たなければいけないと言うのが私の主張です。
知識人とは、我が身にどんな結果が振りかかろうとも、あくまでも“筋を通して”考えること自らの責務とする人たちのことです。
私は、通称「つくる会」神奈川支部の会員です。教科書行界だけでも「御用学者」と思われる学者、ジャーナリスト、文化人らによる一致した権力者志向によって、「つくる会」が長年試練を強いられてきた実情を書きます。
平成19年、「つくる会」の競争会社、保守系の歴史、公民教科書を出版する育鵬社が設立された。育鵬社を設立したのは、フジ・サンケイグループのフジテレビです。フジテレビの日枝社長は、育鵬社の歴史教科書の顧問に八木秀次氏を指名した。八木秀次氏は、前「つくる会」の会長です。八木氏は、「つくる会」の会長の時、「つくる会」事務局長宮崎正治氏(日本会議)と一緒に「つくる会」幹部に極秘でシナを訪問、なんと「中国社会科学院日本研究所」を訪れ、また彼らを日本に招き新しい歴史教科書をめぐって意見交換したというのだ。その後フジ・サンケイグループの「つくる会」乗っ取り、「つくる会」つぶしがあった。その時の「つくる会」とフジ・サンケイの確執は、拙著「保守知識人を断罪す」(つくる会)苦闘の歴史)平成25年、1500円、総和社)を参照ください。私が赤裸々に書いています。この時の産経新聞の報道は実に見苦しかった。
育鵬社が設立されて間もない平成23年7月20日、河村たかし名古屋市長の肝いりで名古屋で中学校歴史、公民教科書討論会が開催された。育鵬社と「つくる会、」の自由社だけが出席し、ほかの教科書会社は出席しなかった。その席で育鵬社の歴史教科書監修者の一人である石井昌浩氏(元拓殖大学客員教授)は、「南京事件は確かにあった。これは事実です。犠牲者の数などの実態についてはまだ論争が続いてる」と発言しているのです。私は驚きました。育鵬社は保守系の歴史教科書だから「南京虐殺事件は否定する」と思っていたからです。渡部昇一氏は、長年南京事件否定論者で有名ですが、彼も育鵬社の歴史教科書の監修者ですが、石井氏の発言に肯定もしなければ、否定もせず、無言を押し通した。
文科省は、南京事件「あった派」で犠牲者の数は未定と主張しています。南京事件を否定すると歴史教科書としての検定を与えません。何故か?文科省は、民間の南京事件研究者、例えば東中野修道の命を懸けた研究成果や南京事件に疑問符を投げかけた田中正明、鈴木明、冨澤繫信、阿羅健一、北村稔等の諸氏らの論文に一切目もくれず、「日中歴史共同研究」の日本側出席者の北岡伸一、笠原十九司、斎藤一晴、庄司潤一郎らの主張をそのまま受け継いでいるからです。それでも「つくる会」は、四年毎の検定の年には、毎回文科省と論戦を繰り返してきました。育鵬社は日本の権力に簡単に追従したのだ。追随したのは日本の権力ばかりでなく、シナ、韓国の権力に追随したのだ。なぜなら歴史教科書にシナ語や韓国語の名前や地名などがあるとわざわざシナ語や韓国語のルビをふっているのです。こういう情勢にもかかわらず、日本会議を初め、非常に多くの無数の知識人が圧倒的に育鵬社を支持した。どうしてこんな現象が起きたか。日本の知識人の多くが権力者に追随することが好きな「御用学者」だからです。権力者とは安倍政権とフジテレビです。フジ・サンケイグループは、保守言論出版機関に大きな影響力を持っているからです。
平成27年ユネスコ遺産にシナが申請した「南京大虐殺文書」が登録されたことを受けて、有識者によって結成された団体が平成27年11月28日に都内で「南京大虐殺」の歴史捏造を正す国民会議」の集会を開き南京大虐殺の証拠が存在しないことを政府が対外発信するよう求めた。この会議の参加者920名、左翼の発表なら参加者二千名ぐらいになったでしょう。私はこのような集会は当然だが、私が驚いたのかこの国民会議の議長に渡部昇一氏がなっていることです。渡部昇一氏は、確かに超有名な保守知識人の重鎮と言われているくらいですが、しかし彼は南京事件否定派だが、実際には南京否定のため行動をしているどころか、育鵬社の歴史教科書の監修者です。同じ監修者の石井昌弘氏は。「南京事件はあった」と公言した通り歴史教科書を作ってきた。その教科書に渡部氏は同調したということです。そのような教科書にそれこそ数えきれない沢山の知識人が支持したのです。
「南京大虐殺」の歴史捏造を正す国民会議」への「呼びかけ人」のリストに大勢の知識人の名前が記載されています。その中に伊藤哲夫、小田村四郎、田久保忠衛、松浦光修、椛島有三などの諸氏がいます。彼らはみな日本会議の幹部です。彼らは南京大虐殺を公認する育鵬社の歴史教科書を支持するだけで、南京大虐殺事件否定に何ら役立っていません。特に伊藤哲夫氏は、日本政策センターで月刊誌、「明日への選択」を発行し、育鵬社の教科書宣伝記事を書きまくり、「つくる会」の記事など一切書きません。私は数年間「明日への選択」の購読者だったから知っているのだ。購読を辞退した理由は、彼は一度も「つくる会」の記事を載せなかったからです。その彼が安倍総理のブレーンの一人で、安倍氏の憲法改正論の提案者と言われています。昔から日本には、こういう典型的な御用学者が多いのだ。一方「呼びかけ人」リストには杉原誠四郎、西尾幹二、藤岡信勝、諸氏の名前も記載されています。この三人は、「つくる会」の会長、副会長経験者です。彼らは南京事件否定しても文科省の検定を取ろうと一生懸命努力した。しかし平成27年の検定のときは、検定をとるために南京事件を肯定までして生徒にうそを教えるより、南京事件を一切触れず、かわりに昭和12年7月にシナ通州で起きた日本人虐殺事件である「通州事件」に触れて検定を取ることができた。特に通州事件は、これまでどの教科書も全く触れず、今回「つくる会」が戦後初めて歴史教科書で触れたのです。若い人たちはほとんどこの事件を知りません。ぜひ「つくる会」の副会長、藤岡信勝氏が著した自由社ブックレット5「通州事件、目撃者の証言」(頁数111、500円)をお読みください。平成28年1月ユネスコが「南京大虐殺」を記憶遺産に登録すると「つくる会」はそれに対抗する意味で設立した「通州事件アーカイブズ設立基金」は、平成28年5月「南京大虐殺」のユネスコ記憶遺産登録に対抗して「通州事件」をユネスコ記憶遺産に登録申請した。「歴史戦」はいまはやりの戦争です。育鵬社の代表格、八木秀次氏は、「つくる会」の会長時代、極秘にシナ訪問し「中国社会科学院日本研究所」の学者たちと会談しているのだ。育鵬社が歴史戦で戦えるわけがない。このことだけでも育鵬社支持の多くの無数の知識人は無視しているのです。
平成29年2月14日に文科省が発表した小中学校の学習指導要領改訂案の中に、聖徳太子の呼称を否定し、「うまやどのおう」《漢字変換できず》と呼ばせるという歴史教育の新方針が打ち出された。これに対し「つくる会」は「聖徳太子を守れ」と立ち上がり、国民からも多くの反対声が寄せられ、文科省は方針を転換し、3月31日に告示された最終確定版では、「聖徳太子」は小中とも復活。その他「歴史用語革命」とでも言うべき言葉狩りでギロチンにかけられそうになった「大和朝廷」、「元寇」、「鎖国」の用語も生き返ったのだ。つい最近の6月27日の朝日新聞29面では、「聖徳太子が復活したのは、『つくる会』がホームペーなどを利用してコメントを送るよう指示したため」と書いています。読者の皆さん、教科書改善に全力を尽くして、日本の為に「歴史戦」を戦っているのは「つくる会」だけなのです。育鵬社は教科書ビジネスを展開するだけで、「歴史戦」どころか教科書改善運動など何も役立っていません。
読者の皆さん、メディア・リテラシーならぬ知識人・リテラシーの力を発揮して、育鵬社、日本会議を支持する無数の知識人たちの発言、行動を無視してください。